EVバッテリーの製造工程とは?
- 課題と解決策もご紹介
目次
EV普及の背景とバッテリー需要の高まり
現在、世界的に自動車のEVシフトが進められており、多くの国や企業が取り組んでいます。そもそも電気自動車は1800年代に開発され進化を遂げてきましたが、幾度かのブームを経て、ガソリン車製造が中心となる時代が到来しました。ところが1960年代には日本では高度経済成長を迎え、大気汚染や車の排気ガス問題が深刻化し、予防策としてのEV開発に改めて注目が集まりました。
国内では2009年の三菱自動車の「i-MiEV」、2010年の日産の「リーフ」の発売を機に一般向け乗用車としてのEVが本格的に製造スタートしました。
そして世界的には2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定にてCO2排出量の削減について高い目標が掲げられたことから、世界的に持続可能な交通システムとしてのEV普及が現実的に進められることになりました。
各国政府や自動車メーカーは近年、具体的な目標を掲げています。日本は、2035年までに新車販売で電動車100%を実現する目標を掲げ、EUは2035年までにガソリン車およびディーゼル車の新車販売を禁止し、すべてを電気自動車とする方針です。米国は2021年時点で、2030年までにEV化率50%以上とする大統領令が出されました。中国では電動車の割合を、2035年までに50%以上とする目標を掲げています。
こうした流れを受け、EVの動力源となるバッテリーの需要も高まっています。
EVバッテリーの一般的な製造工程
EVバッテリーのうち、主流となっているリチウムイオン電池の一般的な製造工程を確認しておきましょう。
工程は大きく分けて「電極製造工程」「組立工程」「検査工程」の3つに分かれます。バッテリーの電極を製造した後、セル、モジュール、パックという構成に組み立て、正常に利用ができるかどうかの検査を行っていきます。
●電極製造工程
まずは電極を製造する工程です。
1.電極の原材料を混ぜ合わせる
電極の原材料を混ぜ合わせ、接着剤と合わせてペースト状にします。
2.塗工・ロールプレス
ペーストにしたものを金属箔に塗工し、乾燥させ、ローラーでプレスします。
3.スリット(切断)
プレスしたものを適当な大きさに切断します。
●組立工程
4.巻回
正極と負極の間にセパレーターをはさみ、巻き取ります。
5.スタッキング
巻き取った電極をセル単位にするためにケースに入れます。
6.注液
セルに電解液を注入し、電極を浸します。
なお、この組立工程には、TIM(放熱材)を塗布する工程があります。
●検査工程
組み立てが終われば、検査工程に入ります。
7.充放電
充放電とは、充電と放電を繰り返して電池を活性化させ、内部に発生したガスを抜くことを指します。
8.検査
容量や性能を検査して問題がなければ完成です。
EVバッテリー製造における課題
EVバッテリー製造においては、次のような課題があるといわれています。
●原材料コストの削減
近年、リチウムイオン電池に使用されるコバルト、ニッケルなどの原材料不足からコスト高騰が問題視されています。この状況を受け、製造工程においては、極力、原材料の無駄な使用をなくす、効率的な方法を検討する必要が出てきています。
●セパレーター成膜のフィルム膜厚が不均一
セル製造工程において、電極の正極と負極との間に入れ、両極を絶縁し、ショートによる異常発熱を防止するセパレーターを成膜する工程があります。この成膜の際に、フィルム膜厚が不均一になってしまうという課題があります。これは塗布の手法に関わってくる問題です。
手動の塗布は、熟練の塗装工であっても完全な均一性の実現は困難です。また機械においては塗布のスプレーの方法などによっても膜厚の状態が変わってきます。そのため、均一性や精度向上を追求する場合、手法の見直しが求められます。
●複雑な形状への塗布がむずかしい
セル製造工程においては、正極・負極材やセパレーター接着の工程において、複雑な形状のワークへの塗布がむずかしいといった課題があります。
この課題も、塗布の手法に検討の余地があります。複雑に入り組んだワークに対して隅々にまで適切に塗料が行き渡るような、精度の高い塗布方法が求められています。
●セルスタッキングの際の両面テープ接着による品質のばらつき、手作業による工数の増加
セルを組み立てる際には、手作業にて両面テープを用いてセル同士を接着することが行われてきました。しかし、手作業であるがゆえに、どうしても品質のばらつきは避けられません。
●電解液充填の際に微細な塗布量調整を行いたい
電解液を充填する際には、充填する塗布量は十分なコントロールが必要です。しかし微細な調整がなかなかむずかしいといった課題があります。
EVバッテリー製造における課題解決策
EVバッテリー製造における上記の課題は、次のような解決策が期待できます。
●製造の自動化による生産性向上
原材料コスト増に対する対応策として、省人化によるコスト削減が挙げられます。省人化の手法の一つとして考えられるのが、製造の自動化です。手作業が残る部分の機械化により自動化することで、省人化につながります。また自動化により生産性向上が実現することで、利益率向上につながり、コスト対策になり得ます。
●材料を無駄にしない塗布が可能なシステムを使用する
EVバッテリー製造の自動化を進める際に、塗布工程の自動化を進める際には、材料を無駄にしない塗布が可能なシステムを使用することが一案です。これにより、原材料コスト増に対する対応策となるでしょう。
●精密塗布ができるシステムによる品質向上
特に精密塗布ができるシステムによって、品質向上を進めることも有効です。
例えばノードソンのEVバッテリー製造自動化ソリューションでは、セパレーター成膜時のフィルム膜厚の均一化が可能です。自動でフィルムとシートの厚さやプロファイルを調整する機能を搭載していることが、均一化を実現できる理由です。
また正極・負極材やセパレーター接着の工程において複雑な形状への塗布がむずかしいケースでは、ワークに応じたバルブ数の増設が可能です。バルブとは、流体の量や方向、圧力などを調整するために使われる部品です。これにより複雑な形状のワークへの塗布も可能になります。
またセルスタッキングの際の両面テープ接着による品質のばらつき、手作業による工数の増加といった課題に対しては、感圧接着剤に代替し、1台であらゆるパターンの塗布が可能なスプレーアプリケーターを利用することで課題解決につながります。
電解液充填の際に微細な塗布量調整を行いたいという課題に対しても、ノードソンのディスペンシングバルブを導入することで解決する可能性があります。
これらの技術を組み合わせることでEVバッテリーの品質向上を目指すことができます。
まとめ
EVバッテリーの現状や製造における課題、解決策をご紹介しました。EVバッテリー製造の課題は他にも数多く存在するかと思われますが、その中でも、今回ご紹介したノードソンのEVバッテリー自動化ソリューションによる課題解決策は、ぜひおすすめしたい方法です。
接着剤、コーティング剤、シーラント剤、熱伝導材料等の高精度で効率的な塗布により、電気自動車用バッテリー製造における自動化を促進します。
精密塗布技術ソリューションは、あらゆる段階「構成部品製造」「セル製造」「モジュール生産」「バッテリーパックアセンブリー」「プロダクトインテグレーション」においてEVバッテリー製造の生産工程を改善します。これにより、拡大するバッテリー製造需要に対応可能です。
すでに世界で100万台以上のEVに電力を供給しているバッテリーメーカートップ10に採用されています。
またノードソンのソリューションにより、「バッテリーの電極重量測定」や「燃料電池のメンブレン重量測定」、また「バッテリーモジュールのスタッキング」や「バッテリーのパウチスタッキング」等も実施できますので、ぜひご検討ください。





