接着とは?

- 接着のメカニズムや接着力を維持するポイントをご紹介

接着剤を用いて接着接合するニーズがある分野は、近年、多様化しています。その対象物としては建築材料や衣料、紙、歯科治療、自動車部品、精密機器、医療機器など、多岐に渡り、あらゆる産業分野で活用されています。

今回は、接着の定義や接着のメカニズム、高い接着力を得るためのポイントとして、濡れ性・接触角の意味をご理解いただくとともに、濡れ性を改善する方法や接着力を維持するための留意点についてもご紹介します。ぜひご覧ください。

目次

  1. 接着とは?接着のメカニズムを解説
  2. 高い接着力を得るためのポイント~濡れ性・接触角~
  3. 濡れ性を改善する方法「表面改質」とは
  4. 接着力を維持するための留意点とは?
  5. まとめ

接着とは?接着のメカニズムを解説

接着とは、接着剤を介して、機械的、化学的、物理的な力によって二つの面が結合した状態を指します。

接着剤とは2つの被着体(接合される対象物)の間に入ることで、被着体の面を結合させる物質のことです。

接着には、一般的に、「機械的結合」「化学的結合」「物理的相互作用」の3つの結合状態を定義できます。この3つの要素が作用することで接着が実現します。それぞれの結合状態の特徴を解説します。

1.「機械的結合」
機械的結合とは、接着剤が材料表面の凸凹(でこぼこ)面に浸透し、木の根のように入り込んで、接着力が高まることを指します。これを「硬化後アンカー効果(投錨効果)」と呼びます。アンカーとは船の錨のことであり、鉛が海底に食い込む状態に例えられています。

多孔質材料等では細かい凹凸や結晶構造が表面に形成されますので、そのような凹凸や結晶の隙間に接着剤が入り込むと抜けにくくなります。そのため、ブラスト処理等をして対象物の表面の加工を行うことで接着剤が入り込みやすい状態を作り出すことも可能です。
反応型接着剤による接着は、この機械的結合と後述する分子間力による結合が組み合わされていることが一般的です。

機械的結合は、被着体の素材によって効果が異なります。木材・繊維・不織布・紙などは効果が高いですが、金属・セラミック・ガラスなどは効果が薄い傾向があります。

2.「化学的結合」
化学的結合は、大きく分けて2種類あります。一つは、被着体同士が接触し、溶融や熱によって結びつき、接合面が溶解加圧することによって、相互拡散して接合するもの、もう一つは、化学反応によって共有結合を形成するものです。化学的結合は、他の2つに比べ、最も強い接着を生み出すといわれています。

被着体や接着剤分子の接着界面において分子鎖同士が絡み合うため、化学的結合は、機械的接合や物理的相互作用による結合よりも、強い接着を生み出すといわれています。

3.「物理的相互作用」
物理的相互作用は、接着剤と被着体が完全に密着することで、隣接する分子が電気的に引き合う力を利用して接着させる方法です。さまざまな相互作用と相乗効果で結合力を発揮します。
想定される相互作用には、イオン間相互作用、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、配向力などがあります。

例えば、物質をミクロ的にみると、分子中にはマイナス電荷とプラス電荷が存在しており、接着剤の分子と被着体の分子もこれによりプラスとマイナスの分子がそれぞれ引き付け合うことで結合します。

このように、いくつかの接着の原理を説明しましたが、接着の原理はそれぞれ単独で作用するわけではなく、様々な作用が複合的に働いておこるものと言えます。

高い接着力を得るためのポイント~濡れ性・接触角~

接着剤は基本的に全て液状です。「くっつく」という現象は、この液状の接着剤が乾いて固まることで対象物がそれぞれ固定されていることを指しています。接着剤が液状である理由は、対象物の表面が「ぬれる」必要があるためです。

接着力を高めるポイントとして「濡れ性」が高いことが重要になります。

濡れ性とは、接着剤を塗布した際に、被着体表面に接着剤が均一に濡れて広がり、なじむ度合いを指します。

濡れ性を客観的に判断するには、濡れ性評価における指標の一つ「接触角」を測定することが必要です。接触角とは、ある個体の上に、液体を落としたときにできる液滴の膨らみや高さの程度を数値化したものです。

接触角が0度に近いほど、よく濡れた状態、つまり濡れ性が高いといえます。一方で、接触角が180度に近いと濡れ性が低くなります。

濡れ性が高いほど接着力が高くなるため、接着力を上げるには、接触角が0度に近くなるようにする必要があります。そのためには「表面改質」が必要になってきます。

濡れ性を改善する方法「表面改質」とは

濡れ性改善のための「表面改質」とは、被着体の表面の濡れ性を高めるために行う方法を指します。

表面改質の方法には、主に「表面洗浄」「プラズマ洗浄」「プライマー処理」「表面粗化」の4つがあります。それぞれを解説します。

1.「表面洗浄」
表面洗浄は、溶剤や水を使用して、被着体表面の埃や、皮脂などの有機汚染物を除去する方法です。表面をクリーンにすることで濡れ性改善につながります。

2.「プラズマ洗浄」
プラズマ洗浄は、プラズマを用いて被着体表面の有機汚染物などを除去する方法です。気体に連続的なエネルギーを供給し続けると、電子を放出して、プラズマ状態となります。プラズマは、被着体の表面分子の化学結合を切断し、被着体表面の有機汚染物などを除去します。さらに、表面を親水性にすることにより、濡れ性を向上し、接着性を高めます。

プラズマ洗浄は、接着剤との結合を促進させるための理想的な状態を形成することから、最も効果が期待できる方法です。

3.「プライマー処理」
プライマー処理は、接着剤と被着体に結合しやすいプライマーという低粘度のコーティング液剤を、接着剤と被着体の中間層として塗布することで表面を平滑化し、接着性を向上させる方法です。被着材によって適したプライマーの種類は異なります。

4.「表面粗化」
表面粗化は、被着体の表面に投射材を吹き付けるブラスト加工など、表面を粗化する処理を施すことで、濡れ性と接着表面積を増加させる方法です。

接着力を維持するための留意点とは?

接着剤の強度が劣化すると、接着効果が落ちてしまい、製品によっては深刻な事態をもたらします。そもそも接着剤の強度劣化の要因には、主に次の3つの要因があります。

1.硬化収縮による残留応力や加熱硬化冷却時の熱収縮応力によるもの

2.外部の温度変化時の膨張率の変化などの応力によるもの

3.接着部への水分侵入によるもの

応力とは、外力が加わったときに、その力に抵抗する内部の力のことをいいます。1と2は、接着端部の界面に応力が集中することが要因であり、3は、水分の侵入により界面の結合が切れることが要因です。

それぞれの要因を解説します。

1.硬化収縮による残留応力や加熱硬化冷却時の熱収縮応力によるもの
被着体の接着部が硬化して収縮することにより、残留応力が働き接着剤の強度が劣化します。残留応力とは、物体に作用する外力などがないのにも関わらず、物体内に生じている応力を指します。また加熱硬化後に冷却した際には熱収縮を起こすため、それが応力となり、接着剤の強度劣化につながります。

2.外部の温度変化時の膨張率の変化などの応力によるもの
低温になったときなど、冷熱サイクル(※)によって生じる熱応力や、静的な外力や繰り返し応力が加わった場合に生じる強度劣化です。繰り返し応力とは、繰り返して応力が加わることをいいます。

※冷熱サイクルとは:気体を圧縮、膨張させると、温度が下がり、周囲から熱を奪う。さらに圧縮すると温度が上がり、放熱しやすくなるという原理、サイクルのこと。

3.接着部への水分侵入によるもの
使用中に接着部に水がかかる対象物の場合、特に水分が侵入しやすい接着端部の界面に水が侵入していきます。水分は接着剤の中を通過することもあります。接着端部の界面に水分が侵入すると界面の結合が切れてしまうため、接着剤の強度が劣化します。

接着強度が落ちないようにするには、表面改質などを行い、理想的な結合状態を確保することが重要です。

まとめ

接着剤の概要や、高い接着力を得るためのポイントなどをまとめました。

なお、ノードソンでは、ホットメルト接着剤の塗布を効率的に自動化する塗布システムを提供しております。
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生産性向上はもちろんのこと、省人化や品質安定化にも寄与します。

ノードソンでは、接着の基礎知識について動画で解説していますので、ぜひご覧ください。
eラーニング接着編CHAPTER1 「接着の基礎知識」

また、接着剤の種類やそれぞれの特徴を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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