自動車製造の自動化のメリットやポイントを徹底解説

自動車製造の自動化は古くから行われてきましたが、近年はスマート工場化が進んでおり、これまで以上に優れた技術やシステムが導入されています。
しかしながら、まだ手作業の工程が残っていたり、品質面で完全に満足のいくものではなかったりといった課題を感じている方もいるのではないでしょうか。
今回は、自動車製造の自動化に関するトピックとして、現状や工程ごとの自動化の例、自動化のメリットや成功させるポイントをご紹介します。

目次

  1. 自動車製造の自動化が進む
  2. 自動車製造の自動化の例
  3. 自動車製造の自動化を進めるメリット
  4. 自動車製造の自動化を成功させるポイント
  5. まとめ

自動車製造の自動化が進む

近年、自動車製造の自動化がさらに進んでいます。その背景として、次のことが考えられます。

●自動車製造の自動化とは
自動車製造の自動化とは、工場における自動車の製造工程の中で機械やロボット、ソフトウェアなどを導入し、人の判断や操作を極小化する取り組みです。

自動車は、数多くの部品・材料を組み合わせて作られており、1台当たりの構成部品は2万~3万点にも及びます。また自動車の製造はその厳しい安全基準や短いモデルチェンジサイクルなどから、工程の複雑性が極めて高い点が特徴と言えます。

さらに、コストを低減しながら、高い生産性や品質を実現する必要があることから、さまざまな作業を自動化し効率化・品質の均質化を図ることは自動車製造には欠かせない手段です。

●自動車製造の自動化がより一層求められる背景
産業用ロボットは、1960年代に米国の大手自動車メーカーの工場にロボットアームを導入したことで実用化がスタートしたといわれています。

その後、数値制御によるNC工作機械が普及し、日本製の機械が世界的に普及し、加工プロセスの自動化が進みました。また、1990年代後半になるとインターネットの普及からCADなどの設計段階との連携が可能になり、本格的な工場オートメーション化の兆しが見えました。2000年代に入ると、工場内のすべてがインターネットでつながることで、管理性が向上した自動化ソリューションが普及しました。

近年は、大量生産の時代とは一変しており、新たな自動化ニーズが生まれています。その背景として国内の少子高齢化による労働力不足の解消や業務効率化による生産性の向上、日々、変化する消費者のニーズの柔軟な対応などが挙げられます。

近年の代表的なキーワードとして「スマート工場」が挙げられます。単なるロボット導入ではなく、従来以上に柔軟かつアップデートしやすい自動化プラットフォームが不可欠となっています。IoT で全設備を接続し、AI でリアルタイムに条件を最適化するスマート工場は、「人手不足」「需要変動」「モデル多様化」といった現在の自動車製造が抱える様々な課題の解決策として注目されています。

自動車製造の自動化の例

自動車製造の自動化はどのように行われているのでしょうか。主な工程における例を見ていきましょう。

●プレス工程
金属板を圧縮してドアやボンネットなどを成形するプレス工程では、機械による圧縮・成形の後で、搬送ロボットが活躍しています。ドアやボンネットなどは重量があるため、人が運ぶと落とすなどの重大な事故につながる恐れがあります。ロボットが代行することで確実かつ安全に作業が可能になります。

●溶接工程
溶接とは、金属パーツを接合するための工程です。電流やレーザー光線などの熱を利用して行います。この溶接は従来人間が行ってきましたが、近年は溶接ロボットに置き換わってきています。

人に変わって溶接することは、省人化や効率化などに加えて安全面や健康面の対策になるメリットがあります。溶接作業においては紫外線や一酸化炭素、気体化した金属である溶接ヒュームといった人体への悪影響を防ぐことが可能になります。

●組立工程
製造部品などを組み立てる工程です。少量多品種の自動車製造が進む中、人が手作業でコンベアによって運ばれてくるパーツを組み立てる作業を行うのが一般的でした。しかし人手で行うのは作業効率やスピード、ヒューマンエラーの面で課題がありました。

そこで組立ロボットが使われるようになりました。多関節ロボットと呼ばれる人間の手のようなアーム付きのロボットが組立工程を支えています。

●塗装工程
パーツのカラーリングや防錆などのために行われる塗装の工程においては、人手作業は非常に効率が低く、ロボット導入が進んでいます。塗料には人体に有害なものも含まれるため、健康を守る意味でも塗装ロボットが役に立っています。

●検査工程
検査の工程は自動車の高い品質と安全性を確保するために重要な工程となります。検査員が、国が定めた安全基準に沿っているかどうかを外観検査や走行テストにより検査します。

近年は、AIによる画像識別技術の活用が認められるようになったことから、今後は検査の自動化技術も進化し、導入が進んでいくでしょう。

自動車製造の自動化を進めるメリット

自動車製造の自動化を進めるメリットをご紹介します。

●品質の安定化
製造の自動化により、品質の安定化が期待できます。従来の人による作業では、品質のバラつきやヒューマンエラーが課題となっていました。自動化したことで、製品のうち、良品の割合を表す歩留まり率の改善が実現したという声も挙がっています。

●人手不足の解消
これまで人が工場内で単純作業を行ってきた工程は数多くあり、それらを順次、自動化することによって省力化が可能になります。ロボットの夜間無人稼働が実現すれば、休日出勤や長時間労働を削減し、現場の働き方改革を推進できます。同時に技能伝承をデジタル化することで、熟練工の引退リスクにも備えられます。

●コスト削減
自動化による省力化が進めば、本格的に人員削減が可能になります。また効率化や品質改善が進むことで、原材料のロスや作業ミス、不良損失やエネルギー消費を減らすこともでき、利益率の向上が期待できます。

●生産リードタイム削減
IoTやAGV(Automated Guided Vehicle)と呼ばれる無人搬送車などを採用することで、段取り替えや部品・工具の移動にかかる時間を短縮する事例も増えています。ラインの滞留を最小化し、平均リードタイムを30%以上短縮したというOEMの事例もあります。

●少量多品種製造への対応
近年のロボットコントローラは、実際に稼働する前の段階から動作を指示できたり、ラインの状況をシミュレーションできるオフラインティーチングを標準装備しており、事前検証が容易となりました。また用途の汎用性が高まり、プログラムを少し変えるだけで多品種にも対応できるようになっています。今後も少量多品種展開や受注生産の要望は高まっていくと予想されますが、これらの自動化技術により在庫リスクを増やさず、効率的に需要の変動に対応できます。

自動車製造の自動化を成功させるポイント

自動車製造の自動化を成功させるポイントとして、次のことが挙げられます。

●コストの最適化を考えながら導入する
自動車製造の自動化は、人件費のコスト削減が期待できますが、同時に他の部分のコスト削減も意識することで、より投資効果が出やすくなります。
例えば塗装工程において、精密な塗装コントロールが可能なソリューションを導入することは、塗料のムダや原材料費削減だけでなく、製品品質向上、VOC削減による脱炭素、作業環境の改善による従業員の満足度向上といった間接効果まで含めて検討することが重要です。

●人の作業を残しながら一部からでも始めていく
自動化の壁の一つに、初期導入コストがあります。この場合は初めから全自動化を考えるのではなく、人による作業を残しながら、一部からでも段階的に導入するのが有効です。ラインバランシングを見直すと「自動化+人協働」で最大効率を引き出せます。まず歩留まり改善効果が高い溶接・塗装検査から着手し、効果検証後に上流から下流へ拡大するケースが定石です。

●トラブルやメンテナンスのサポート体制を確保
自動化を進める上では、トラブルやメンテナンスが生じた際のサポート体制をしっかりと確保しておくことが重要です。機械の提供事業者を選定する際に、重視することをおすすめします。

まとめ

自動車製造の自動化は、労働力不足や多品種化といった業界共通の課題を解決するだけでなく、品質・コスト・環境負荷といった企業全体の利益やブランドイメージにも大きく寄与する重要な取り組みです。
EV バッテリーやモジュールのように技術革新スピードが速い分野ほど、自動化への投資の回収が早い傾向にあります。

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