電気自動車の生産コスト削減のポイントとは?

近年、電気自動車の需要が世界的に高まっていますが、同時に生産コストの上昇という課題も顕在化しています。今回はEV生産コストの約4~5割を占めるバッテリーを中心に、そのコスト削減のポイントを「自動化」というキーワードで整理します。EVビジネスに携わる皆さまが具体的な打ち手を検討する際の一助となれば幸いです。

目次

  1. 電気自動車の需要
  2. 電気自動車の生産コストが高い要因
  3. バッテリー製造の自動化によるコスト削減の可能性
  4. バッテリー製造の自動化によるコスト削減のポイント
  5. まとめ

電気自動車の需要

電気自動車の世界的な需要増加は各国政府の環境政策と企業のカーボンニュートラル戦略が後押ししています。
2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定では、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度よりも十分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求することが世界共通の長期目標として掲げられ、持続可能な交通システムの構築とともに、電気自動車の普及を通じた温室効果ガスの排出削減が目指されました。

2017年に英国政府とフランス政府が、2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止することを宣言したほか、同年、中国政府が2019年に自動車メーカーに対し10%の新エネルギー車(NEV)の製造・販売を義務付ける規則の導入を発表するなど、電気自動車シフトへの動きが具体化されました。

近年は、環境配慮のために各国政府や自動車メーカーは具体的に開発目標を掲げて取り組んでいます。日本は、2035年までに新車販売で電動車100%を実現する目標を掲げ、EUは2035年までにガソリン車およびディーゼル車の新車販売を禁止し、すべてを電気自動車とする方針です。米国は2021年時点で、2030年までにEV化率50%以上とする大統領令が出されました。中国では電動車の割合を、2035年までに50%以上とする目標を掲げています。

2025年6月時点では、主要15ヵ国(中国、米国、日本、インド、ドイツ、フランスなど)自動車販売全体における電気自動車販売台数シェアは約26%を占めています。国別にみると、中国が圧倒的に多く100万台程度を占め、次いで米国が約13万台、ドイツ、英国、フランスと続きます(マークラインズ調査2025年より)。

こうした中、電気自動車の製造メーカーは、数多くの課題に直面しています。人手不足や原材料コストの低減、DXの推進、顧客ニーズの多様化への対応、業務効率化などあらゆる課題への解決が急がれています。中でも深刻なのが生産コスト増です。

電気自動車の生産コストが高い要因

世界的に、電気自動車の生産コストが高まっていることが大きな課題となっています。その要因として、次のことが考えられます。

バッテリーの原価が高いガソリン車を構成するのは、パワートレイン、エンジン、トランスミッション(変速機)などですが、電気自動車はバッテリー、モーターといった固有の部品が必要になってきます。

特にリチウムやコバルトなどのバッテリーの原材料不足から主要金属価格の高騰が続いており、BloombergNEFの試算では、2022年のバッテリー平均コストは151ドル/kWhと前年から14%上昇しています。素材高に加え、セル・モジュール・パック組立のプロセスが多工程・多品種化していることもコスト増要因です。バッテリーの価格が、車両価格の4~5割を占めるのではないかとの見方もあります。

●物価の急騰とサプライチェーン混乱
近年の世界的な半導体不足や物流費高騰は、EV特有の駆動用半導体・パワーエレクトロニクス部材の調達にも多大な影響を及ぼしています。部品調達の長期契約や大量購入の交渉力に乏しい新興電気自動車メーカーは、このようなサプライチェーンの混乱による影響を大いに受け、コスト増に悩まされました。原材料費の高騰と調達困難が加わることで、車両販売価格の値上げを余儀なくされています。

こうした状況を受け、日本の大手メーカーは電気自動車の生産コストをガソリン車並みにするべく、駆動装置における希土類(レアアース)を大幅に減らす試みを実施しています。また安価に利用できる資源を用いて、バッテリーなどの製造コスト改善がメーカー各社に求められています。

バッテリー製造の自動化によるコスト削減の可能性

バッテリー製造工程のコスト削減の手法の一つが、自動化です。バッテリーはセル製造→モジュール化→パック化という工程を経ますが、いずれも自動化の余地が大きく、コスト削減の可能性がある領域です。

●省力化による人的コスト削減
バッテリー製造工程には、バッテリーの最小単位であるセルのスタッキングや終端溶接など、いまだに手作業比率の高いものが残っています。こうした工程に、ロボット・自動搬送(AGV/AMR)を投入することで、ラインタクトを短縮しながら人的コストを20~30%削減した事例があります。単なる人員削減ではなく、品質ロス減や稼働率向上も効果として表れます。

●無駄のない精密塗布による材料コスト削減
接着剤や熱伝導材料(TIM)の塗布工程における厚みバラツキは、放熱不良やセル浮き上がりの原因となります。塗布などの工程において、材料コストを削減することができます。高精度な塗布機に切り替えると、塗布材料のはみ出しや飛び散りを抑え、不良品が減ることでコスト削減につながる可能性があります。

●材料の置き換えによるコスト削減
材料を置き換えることで、コスト削減を狙うこともできます。これまでバッテリーセルを両面テープでスタッキングしていた工程においても、ホットメルト等の接着剤に代替することで、材料原価を抑えられる場合があります。

バッテリー製造の自動化によるコスト削減のポイント

バッテリー製造の自動化によるコスト削減のために、押さえておくべきポイントをご紹介します。

●複雑形状のワークへの正確な塗布が実現できるか
EV用セルは円筒型、角型、パウチ型など形状が多様化しています。バッテリー製造において重要になる接着剤塗布の工程において、複雑な形状にはなかなか正確に塗布できないといった課題があります。塗布の自動化を実現するには、様々な形状や塗布材料に対応でき、正確に塗布できる高精度な塗布ソリューションが有効です。

●煩雑な段取り替えの課題を解決できるか
ラインで生産する製品の種類に合わせて装置や治具の設定を変更する「段取り替え」は、ラインを停止する必要があるためスムーズな作業が求められますが、熟練したレベルまで人員教育を行うには限界があります。工数管理に機械やロボットを導入することで、段取り替えの時間や工数が削減でき、容易に実施することができます。

●品質は安定しているか
自動化を進めるに当たって、それぞれの工程における品質を維持・向上できるかどうかは重要です。人による作業はヒューマンエラーが避けられず、一定に品質を維持するのがむずかしいものです。機械やロボットによるデータの可視化やエラーの検出、バラつきの解消や不良率低減にも対応できます。

●世界的に採用されている実績はあるか
電気自動車の製造は世界的に進められている中で、バッテリー製造の自動化ソリューションの選定にも配慮が必要です。バッテリー製造における世界的な車メーカーでの導入実績があるか、またそれによってどのような成果が出ているのかといった点を確認することをおすすめします。

まとめ

電気自動車市場は拡大局面にある一方、製造のコスト増加は世界的に深刻となっています。特にバッテリーに関する原価高騰とサプライチェーンの混乱は、各メーカーの収益性の確保に大きく影響を及ぼしています。生産ラインの自動化は歩留まり向上とコスト削減を同時に実現できる有効な手段です。

自動化を効率的に進めるのにおすすめなのが、ノードソンの電気自動車(EV)バッテリー製造の自動化ソリューションです。世界で100万台以上の電気自動車(EV)に電力を供給しているバッテリーメーカートップ10に採用されていることから、日本の車メーカーの皆様にもおすすめいたします。

ノードソンが持つ、接着剤、コーティング剤、シーラント剤、熱伝導材料等の高精度で効率的な塗布により、電気自動車用バッテリー製造における自動化・効率化を促進し、生産コスト削減にも寄与します。

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