食品工場へのロボット導入のメリット

日本では、長期的に人口減少が続いていることから、少子高齢化が進行し労働人口も減少していくことが予想されています。そのような中で、食品製造業を支える労働力の確保も重要な課題となってきています。
2017年時点で飲食料品製造業の有効求人倍率は2.78倍となっており、全産業平均の1.54倍より非常に高い実績となっています。また、食品製造業は労働生産性が低く、製造業平均の約6割程度の労働生産性となっており、労働者にとっては賃金が上がりづらく、企業にとってはコストに見合う生産量を確保しづらいという課題があります。

参照:農林水産省「食品製造業における労働力不足克服ビジョン」

このような状況から、最近では生産性向上のため製造ラインへのロボットの導入が進みつつあります。食品製造業へのロボットの普及は大きなメリットを期待できる一方、他の製造業と異なる部分として、人が食べるものを扱う点で衛生面が求められたり、原材料の個体差が大きいことで完全な機械化が難しかったり等の課題もあります。
本記事では、食品製造業へのロボット導入のメリットと共に、食品工場のロボット導入の事例やコーティングの自動化の事例をご紹介します。

目次

  1. なぜ食品工場へのロボット導入にメリットがあるのか
  2. 食品工場ロボットの種類と事例
  3. 食品工場の自動化の課題
  4. 様々な業界で進むロボットによる自動化
  5. 食品業界ではコーティングの自動化も進む
  6. ノードソンのエアレススプレーが課題を解決

なぜ食品工場へのロボット導入にメリットがあるのか

食品工場では昨今、食材の加工や製造、充填、検査、包装、保管、搬送などさまざまな工程でロボットが活用されています。ロボットを導入することにより、次のようなメリットが期待できます。

●人手不足解消、省力化、省人化によるコストダウン

少子高齢化が進み、労働人口が減少するなかで、食品製造業界でも人手不足を背景に、ロボット導入が進んでいます。省力化、省人化という課題解決にもつながり、それによって人的コストや工数削減のメリットも期待できます。

●生産性アップによる売上向上

ロボット導入により、作業が効率化し、これまで単純作業に時間を取られていた人員は、コア業務へと専念できることから、生産性向上が期待できます。結果的に、売り上げ向上につながる可能性もあります。

●人的ミス減少による品質向上

ロボットに単純作業を任せたり、ロボットと協働したりすることで、作業者の人的ミスが軽減されます。作業者の作業負担軽減につながりやすくなり、人的ミス減少による品質向上も期待できます。

食品工場ロボットの種類と事例

食品工場では、次のような種類のロボットが利用されています。工程ごとにそれぞれの活用事例をみていきましょう。

【調理・加工】

●食品盛り付けロボット

食品盛り付けロボットは、総菜等をトレイに盛り付けるロボットです。水平多関節ロボットに搭載したハンド機構で盛り付けをするロボットは、コンテナに入った食品(ポテトサラダのような粘度のあるものも含む)を定量ピックすることが可能で、従来人力でないとできなかった作業を代替して行うことが可能です。

【搬送・供給・整列】

●ピッキングロボット

ピッキングロボットは、倉庫や工場などで商品の選択や取り出し(ピッキング)作業を自動化するためのロボットのことです。カメラやセンサーを使って商品を認識し、正確に商品を取り扱うことが可能です。
人間と比較して長時間高い作業精度を維持することができるため、生産性の向上に貢献します。
また、重量物も扱えるため、人間が作業を行った場合の負担を軽減することができます。

●製品整列ロボット

製品整列ロボットとは、自動で食品を指定した位置に整列するロボットです。製品がランダムに配置されている場合、それを一定のパターンに従って整列させる作業を行います。
例えば、ベルトコンベア上で特定の食品をピッキングし、指定した位置へと移動させます。製品のパッケージングの後工程でも使用されるこのロボットは、その後の出荷・在庫管理の工程等も効率化させます。

【包装・箱詰め】

●仕分け用ロボット

仕分け用ロボットは、ロボットハンドやロボットアームでピッキングを行い、製品の仕分けを行うロボットです。例えば、ベルトコンベヤーで流れてくる製品を、ロボットがアームの先端で吸着し、箱などにきれいに収めていきます。実際、これまで人が行っていた作業を代替して、ロボットが仕分けした後、箱詰めまでロボットが担うことで、省人化を実現している事例があります。

●食品パウチの箱詰めロボット

食品パウチを箱詰めするロボットの導入事例です。食品が充填されたパウチを箱詰めするために、パラレルリンクロボットを用いています。パラレルリンクロボットとは、3本のアームで対象物をつまみあげ、箱の中に収めていく方法です。
パウチの向きは、カメラで撮影した画像を解析し、その解析結果に応じて揃える仕組みになっています。ロボット導入により、箱詰めの人的コスト削減とミス軽減を実現しています。

【検査】

●外観検査装置

外観検査装置とは、カメラセンサーやAI技術を用いて、製品の外観を自動的に検査する装置です。食品の不良や異物混入等の検査を素早く実施し、人の目視検査では見逃してしまうような微細な変化も発見することが可能です。
そのため、製品の品質を維持する上では重要な装置となっています。

【梱包】

●ラベル貼付システム

賞味期限が印字されたラベルを食品パッケージに貼り付ける作業をロボットで自動化した事例です。従来、2万個以上もの食品に手作業でラベル貼り付けを実施していたケースでは、長時間労働や人員不足が深刻化していました。貼り付けミスも発生しており、クレームも生じていました。そこでラベル貼付システムを導入して貼り付け作業を自動化したことにより、生産性向上および省人化が実現しました。また人的ミスがなくなったことで、品質が安定するようになりました。

食品工場の自動化の課題

食品工場へのロボット導入による自動化は、食品の製造から検査梱包、包装・梱包、搬送等の様々な場面で生産効率の向上やコスト削減に寄与する一方で、品質保持と人材育成といった課題もあります。

自動化が進む食品工場では、ロボットが一貫して同じ品質の製品を生産できるというメリットがあります。しかし、一方で、機械は人間と異なり、微妙な味の違いを判断する能力を持ち合わせていないため、それが正しい品質ものなのか判断できないという課題が生じることがあります。食品の包装・梱包や搬送時にはそのような問題は起きませんが、繊細な味の変化を判断する必要がある場合は、AIやセンサー技術を活用し、人間同等の判断力を機械に持たせることが必要となります。

また、食品工場の自動化には人材育成の課題もあります。ロボットが多く導入された工場では、従業員はロボット操作のスキルだけを身につければ良いというわけではありません。ロボットの故障や異常時の対応、さらにはロボットが製品の品質を保つための知識や技術を習得する必要があります。企業はそのような知識を従業員に教育できるような体制をつくっていく必要があります。

食品工場の自動化は、品質保持と人材育成の課題をはらんでいますが、これらの課題を克服することで、より効率的で高品質な食品生産が可能となります。自動化の進展とともに、これらの課題解決に向けた取り組みがますます重要となるでしょう。

様々な業界で進むロボットによる自動化

ロボットのような最新技術の導入は前述の通り、省人化や省力化を目的としていますが、既に工場自体の無人化に成功している例もあります。例えば、ロボットを導入したことで、ラインの監視をする従業員が一人いれば生産ができるような状況となっている製造業の現場もあります。これらを遠隔監視に切り替えることで、最終的には完全無人化を実現することも現実味を帯びてきています。

そして食品などの製造業界に限らず、他の業界でもロボットによる自動化は進んでいます。

例えば、物流業界では荷物のピッキングや仕分け、パレットの自動搬送などのロボット、医療・介護業界では手術支援・調剤支援ロボットや見守り・移乗介助ロボットなど、農業界では農業用アシストスーツや自走草刈機、飲食業界では接客ロボットなどの導入が進んでいます。

すでに多くのロボットメーカーが展示会などでロボットを多様な用途で発表しており、自動化でできることやロボットの種類は年々広がっています。

食品業界ではコーティングの自動化も進む

食品業界ではコーティングの自動化も進んでいます。コーティングとは、例えば液卵や醤油、油、チョコレート、シロップ、香味料などの塗布をロボットで自動化する取り組みです。
コーティングを機械で行う場合、スプレーガンというスプレー式の機器で材料を吹き付け塗布します。引き金を引くこと、またはオン信号を得ることで塗料がスプレーされ、均一に塗布できます。このスプレーガンをロボットが制御して塗布のコーティング作業を自動化する工場もあります。

例えば、スナック菓子への油塗布や、食品への液体調味料の塗布などを自動化する企業が増えています。スナック菓子への油塗布の事例では、スナック菓子の表面に油を均一に塗布する際に、必要な箇所に対して効率的にスプレーする自動制御と組み合わせることで、製品の品質向上・品質統一が可能になりました。

上記で取り上げたのは成功事例ですが、スプレーガンのスプレー方式によってはスプレーによるコーティングの際、飛散が多く、周囲に飛び散ってしまうことで材料の無駄が生じてしまうケースも少なくありません。またスプレー方式によっては、コーティングに厚みが出るなど品質が安定しないこともあり、課題となっています。

ノードソンのエアレススプレーが課題を解決

食品業界におけるコーティングの自動化に際して生じる課題を解決するには、ノードソンのスプレーガンがおすすめです。ノードソンのスプレーガンは、「エアレススプレー」と呼ばれるタイプであり、食品業界のコーティングの自動化に最適です。

エアレススプレーは、コーティングする液体材料にエアをかけて霧状にして塗布する「エアスプレー」と異なり、液体材料の吹き出し口を絞り液圧をかけることで霧状にする構造を持ちます。

>【関連コラム】スプレーガンの種類 – エアスプレーとエアレススプレーの違いを解説

ノードソンのエアレススプレーは、次の3つの特長があります。

●高い塗布効率

従来のエアスプレーは、材料の飛散が多いという課題がある一方で、エアレススプレーは材料の飛散が少なく作業環境の改善に効果があります。また塗着効率は一般的なエアスプレーが25~50%、エアレススプレーは60~90%であるため、塗着効率の改善も見込めます。また、エアレススプレーは必要な範囲にだけ正確かつ、少ない材料で均一に塗布ができるため、品質の統一化や材料コストの削減が可能です。

●1,000種類以上のノズルのラインナップ

1,000種類以上もの多様なノズルをご用意しております。ノズルチップの変更のみで、使用する材料や塗布したい形状、量に合わせた塗布が可能になるため、さまざまなニーズにお応えできます。

●パルススプレー技術(高速応答性)

高速でON/OFFが切り替わるスプレーガンと、コントローラーの組み合わせにより、塗布量の管理を簡単に行うことができるパルススプレー技術を採用しております。これにより塗布工程の高速化とともに、ノズル詰まりの低減が実現します。ノードソンのスプレーはロボットと連動した自動制御にも対応します。

ノードソンのエアレススプレーは、食品コーティングの課題である、塗布時の飛散による材料の無駄や品質面、コスト面の課題を解決し、さらに多様なニーズに対応できます。食品コーティングの自動化や食品工場のロボット化をお考えの場合には、ぜひおすすめしたい製品です。

ノードソンのエアレススプレーのその他の事例や、製品詳細は、ぜひ製品紹介ページをご覧ください。

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