缶のコーティングにおける課題と課題解決のポイントとは?
具体的に、缶コーティングにおける課題にはどのような点があるのでしょうか。今回は、課題を探ると共に、その課題解決策をご紹介します。また実際に缶コーティングの課題解決を実現した事例も合わせて見ていきましょう。
目次
缶の製造に必要な缶コーティングにまつわる課題
缶コーティングは、飲料缶などの製造において欠かせない工程です。内容物の風味を維持し、金属材料の腐食を防止するためにコーティング剤(塗料)を金属缶内側に塗装します。この缶コーティングにまつわる課題として、次のことが挙げられます。
●原材料の価格高騰によるコスト削減
コーティングに利用する塗料は、石油由来のビニールやポリエステルなどの原料を使用していることから、石油価格の変動に伴い、値上げに直面しています。このことから、塗料を無駄なく使用してロスをなくすなどのコスト削減が求められています。
●塗料の環境負荷への対応
近年、塗装業界で使用されている塗料については、大気汚染物質として知られているVOC(揮発性有機化合物)による悪影響が懸念されている有機溶剤系から、水性塗料などへの代替が検討されています。缶コーティングに使用される塗料についても同様に対応の必要があります。
また、缶の内面塗装からは環境ホルモンとしての疑いがある物質が検出されることが指摘されていることから、製缶業界ではそうした物質の低減やフィルムラミネートなどの代替策が検討されています。
●人手不足による業務効率化
日本では少子高齢化による労働力不足が深刻化しており、製缶業界でも例外ではありません。工場内の作業員の人手不足により、少ない人員でも生産性を維持できるようにするために業務効率化が急務となっています。
●飲料缶・食糧缶の需要への対応
飲料缶・食糧缶については、将来性が期待されています。世界的には増加することが予測されているほか、脱プラの流れからペットボトル飲料よりもアルミ缶への回帰の流れもあるといわれています。今後、需要が高まってくる可能性は少なくないでしょう。特に人手不足の中で、どのように対応するかが問われています。
缶のコーティング
缶のコーティングは缶の内部および外部を保護するために行われます。
一般的には以下のような塗料が使用されます。
・エポキシ樹脂
耐久性が高く、化学薬品や腐食に対する耐性が優れているため、食品や飲料用の缶に広く使用されています。
・ポリエステル樹脂
エポキシ樹脂と同様に耐久性があり、特に飲料用缶でよく使用されます。エポキシ樹脂と比較して、環境負荷が低いとされています。
缶の内容物と直接接触する塗料は、食品安全基準を満たす必要があります。
健康への懸念から、最近ではBPAを含まないコーティング材が求められるようになりました。これにはエポキシ樹脂の代替として、ポリエステルやアクリル樹脂が使われることが多いです。
缶コーティングの課題と解決策
これらの缶コーティングの課題にはどのような解決策が考えられるのでしょうか。主に次のことが挙げられます。
●塗料のコスト削減や環境配慮を考えた見直し
塗料の価格高騰を受けたコスト削減の必要性、および環境負荷の高い塗料の使用低減についての課題については、塗料の見直しが必要になるでしょう。
コスト削減の対策については、塗布の際にオーバースプレーを防ぎ、できるだけロスを減らすことが一つの方法です。そのためには、精度の高いコーティング用スプレーガンが必要になります。
環境負荷の課題については、水性塗料などへの転換が考えられます。また塗料を使わずに、ポリエステルフィルムをラミネートする手法も開発されており、新たな選択肢の一つとなっています。金属缶そのものは他の容器に比べてリサイクル率も高いことから、その長所を活かしながら環境や安全性に配慮した変化への対応が求められます。
●コーティング機の見直しによる効率化
人手不足や需要増しの課題を受けた解決策として、コーティングに使用する機械を見直すことによる生産時間の削減が考えられます。従来のコーティング機にかかる塗装時間や清掃時間などトータルにかかる時間を削減しながら、塗布品質を維持できるようにする試みが求められます。
また時間の削減だけでなく、塗料を正確かつ効率的に塗布することもコーティング機には求められます。すべての要件を満たすコーティング機の選定が重要になってくるでしょう。
缶コーティングの課題解決事例
缶コーティングの課題について、海外において解決のために進めた事例があります。一つ、大手ビール・飲料缶メーカーの事例をご紹介しましょう。
●大手缶メーカーの缶コーティング事例
【課題】
この缶メーカーでは、従来から使用していた缶コーティング機について大きな課題を持っていました。90分操作するたびに、また機械が15分以上アイドル状態になるたびに、頻繁に手作業で洗浄しなければなりませんでした。
なぜならノズルが頻繁に洗浄されていないと、ノズルスプレーパターンに変化が生じてしまい、缶の金属の露出などの品質上の欠陥を引き起こす可能性があるためです。
しかし手作業は負荷が高く、高度な技術が求められ、生産性の観点からは懸念がありました。
【解決策】
そこで検討したのが、システムによるノズルクリーニングプロセスの自動化です。検討の末、ノードソンのMEG-IIガン、Sprayプレッシャーコントロール、iTraxスプレー モニター システム、およびクリーンスプレーシステムであるCleanSpray XTシステムを導入しました。
【効果】
ノードソンの優れた効率を実現するスプレーガンにより平均コーティング重量を20~25%削減しながら、缶の品質を向上させることができました。
さらにノズルの清掃においても効果が出ました。テスト段階では手動の清掃なしで最大24時間稼働し、12時間ごとにノズルを清掃する仕組みを確認しました。その結果、年間800時間以上もの労働時間の削減につながりました。
ノードソンの缶コーティングソリューションなら課題解決が可能
事例にてご紹介したノードソンの缶コーティングソリューションは、缶コーティングにまつわる課題解決策の一助となります。
長年にわたって築き上げてきた技術と設備の大幅な進歩により、ノードソンのスプレー技術は、数多くの2ピース缶製造プロセスのコスト削減と品質向上に寄与しています。
主な機能をご紹介します。
●スプレー プレッシャーコントロール
スプレー圧力を制御すると一貫性が向上し、より低いスプレー圧力を使用できるため、塗料の無駄を減らすことができます。
●一貫したコーティング温度
同ソリューションでは一つのユニットで加熱と冷却の両方の機能を備えた装置を使用します。一貫したコーティング温度により塗料の粘度とフローをより適切に制御できるようになります。
●高速で再現性の高いスプレーガン
スプレーガンの応答時間が高速かつ再現性が高く、缶の回転速度との同期を実現します。
●幅広いノズルの選択肢による精度向上
幅広いノズルのラインアップの中から選択できることから、最適なものが得られやすく塗布精度の向上が期待できます。
●プロセス監視
主要な機器を監視する機能が備わっていることから、プロセスの問題を迅速に検出でき、問題を迅速かつ簡単に修正できます。
まとめ
製缶業界の缶コーティングにまつわる課題と解決策、事例をご紹介しました。環境の大きな変化が起きている時代において、高精度かつ効率的なコーティング機を導入することは重要といえます。
ノードソンの缶コーティングソリューションにご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。貴社に最適なご提案をさせていただきます。