ホットメルトとは

- 特徴やVOC規制強化への対応

ホットメルトとは、主に接着剤として使われる樹脂製品の一つです。加熱すると液体になり、冷却すると固まるという性質を持ち、近年は安全性の面から有機溶剤の代わりの接着剤として注目されています。

有機溶剤は、労働安全衛生法および労働安全衛生法施行令の規定に基づいた有機溶剤中毒予防規則のほか、消防法上の第4類に該当し、届け出や保管数量の管理が必要となるなど、従業員の安全や健康管理に深くかかわるほか、国際的なVOC(揮発性有機化合物)規制の対象物としてビジネスへの影響が懸念されます。海外の一部の国では輸入品についても厳しく規制されており、日本企業も規制の強化に適合していく必要があります。
ここでは工場・事業場からのVOC排出が懸念されるものとして溶剤形接着剤を取り上げ、VOC規制の実態と共に、ホットメルト接着剤の特徴や使用するメリットや応用例をご紹介します。

目次

  1. ホットメルトとは
  2. ホットメルトの種類
  3. ホットメルトの塗布方法
  4. 環境規制と接着剤
  5. ホットメルト接着剤の特徴やメリットと応用例
  6. まとめ

ホットメルトとは

ホットメルトとは、熱で溶かして接着するタイプの接着剤の一つです。身近なものだと、グルーガンをイメージすると分かりやすいかもしれません。

ホットメルト接着剤の歴史は20世紀中頃に遡ります。最初のホットメルト接着剤は、1940年代から1950年代にかけて開発されました。これらは、熱を加えることで溶融し、冷却すると固化する特性を持つ合成樹脂を基盤にしています。最初の用途は、主に製本や包装産業での使用でした。1950年代、アメリカの企業が初めて商業的に成功したホットメルト接着剤を市場に投入し、その後急速に普及しました。1960年代以降、ポリオレフィン系やEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)を用いたホットメルトが登場し、多様な用途に対応できるようになりました。以降、技術の進化に伴い、環境負荷の低減や性能の向上が図られ、今日では自動車、電子機器、繊維など多岐にわたる産業で使用されています。

ホットメルトの種類

熱可塑性樹脂・熱可塑性エラストマーを主成分とした接着剤です。室温では個体・半固体の形態ですが、加熱して液体状にしてから塗布します。塗布後、冷えると固化することにより、接着が完了します。

ホットメルト接着剤には、非反応型と反応型の2種類があります。

・「非反応型」
塗布後、冷却することで固化して接着します。
主な種類:EVA樹脂系、合成ゴム系、ポリアミド系、ポリエステル系
長所:無溶剤なので安全性が高い点や、乾燥工程が不要で接着速度が速く生産性が高い点、さまざまな被着体に対応できる点などが長所です。
短所:環境温度が作業性・接着性能に影響する点や、一般的に化学反応により硬化する接着剤と比較して強度が低い点、高温で使用するため、やけどなどに注意が必要な点が短所として挙げられます。
・「反応型」
塗布後に冷却することで固化した後、さらに空気中の湿気と反応して硬化することで接着します。
主な種類:PUR(ウレタン樹脂反応)系、POR(オレフィン樹脂反応)系
長所:無溶剤で安全性が高い点や乾燥工程が不要で接着速度が速い点は非反応型と同様です。一方で、非反応型より耐熱性・耐久性に優れます。また冷却固化により初期接着しますが、完全養生を待たずに次の工程に移行できるという長所もあります。
短所:環境温度が作業性・接着性能に影響する点、透湿性の低い被着体同士の張り合わせが困難な点、空気中の湿気に反応するため、塗り置きに適さない点が短所といえます。

>【関連コラム】接着剤の種類とは?- それぞれの特徴を徹底解説!

ホットメルトの塗布方法

ホットメルト接着剤は、常温で固体、加熱すると溶融し液体になる性質を持ちます。一般的な液剤塗布と同様、塗布パターンに応じたアプリケーターが存在します。それぞれの特徴をご説明します。

ホットメルト接着剤の塗布パターン

ホットメルト接着剤の塗布パターンをノードソンで行っている分類に従って順に説明します。

1.点塗布・線塗布

粘着テープや両面テープ代替として利用される最も一般的な塗布方法で、平面・立体どちらにも塗布可能です。

2.面塗布
ハケ塗りなどを代替する、一定の厚みで面状に塗布する方法で、塗布厚みや接着剤のはみだしが少なく、美粧性に優れます。
3. スプレー塗布
霧状に塗布する一般的なスプレーとは異なり、細い繊維状にしたホットメルト樹脂をまばらに塗布する方法です。極めて少ない塗布量が実現でき、通気性や風合いを維持します。

>【関連コラム】接着剤の塗布方法と塗布技術を徹底解説!

環境規制と接着剤

VOCとは「Volatile Organic Compounds/揮発性有機化合物」の略で、大気中で気化する有機化合物の総称です。トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの多様な物質が含まれます。
近年、このVOCを含む溶剤などの使用の規制が強まっていることを背景に、脱溶剤化が進んでいます。

・日本でのVOC規制

日本では、VOCの排出規制が平成18年4月1日より開始され、自動車の炭化水素の排出量規制や、自動車部品の塗装などを行う塗装関係施設、接着関係施設、印刷を行う施設や化学製品製造関係施設などへの規制が行われ、それ以外にも、経済産業省をはじめとした行政による自主的取組の促進、各種検討調査、アドバイザー派遣、などの施策が講じられています。

・カナダでのVOC規制

2008年、当時の環境大臣によりマニキュアや接着剤など98種類の個人が使用する製品、塗料・ニスなどをはじめとした48種類の建築用コーティング材、自動車等の傷ついた表面の修復・仕上げに用いる14種類のコーティング材やクリーナーなどにVOC濃度上限値の設定がされました。

・中国でのVOC規制

中国では、2020年12月よりVOC規制が適用されています。北京や重慶など重点地域での大気汚染防止を目的として、主要産業にVOCの発生抑制を要求する政策を実施、低VOC製品規格品へ移行するよう強制しており、日本企業でも中国工場に塗料や接着剤などを使用する場合は対応が必要となります。

・接着剤に含まれるVOCと脱溶剤

VOC排出に懸念のある分野は様々ありますが、特に接着の分野でVOC排出が懸念されるものとして溶剤形接着剤があります。この接着剤に含まれる有機溶剤は、塗布後、揮発して固まる際にトルエンや酢酸エチルといったVOC として大気中に放出されるため、脱溶剤化が求められています。

自動車内装部品製造

ホットメルト接着剤の特徴やメリットと応用例

VOC排出が懸念される溶剤形接着剤を代替するものの1つに、ホットメルト接着剤があります。ホットメルト接着剤は常温で固体、加熱すると溶融し液体になる性質を持ち、VOCの含有量が極めて少なく大気汚染も防ぐことが可能です。また乾燥・養生工程が不要で接着速度が速いというホットメルト接着剤の特徴は、生産性向上にも寄与するメリットとなり、さまざまな業界の製品製造工程で採用されています。

・自動車

自動車向けの接着剤は耐熱要求が高く、従来のホットメルト接着剤では適用部位が限られていました。というのも、ホットメルト接着剤の特徴としては、先に述べたように、加熱すると溶融し液体になるという性質を持ちますので、耐熱要求が高い部位への使用が難しいという課題がありました。しかし、最近開発された自動車向け高耐熱ホットメルトは直射日光により高温になる部位であるインストルメントパネルやドアトリムの内装表皮接着にも対応可能となりました。ホットメルトを使用する事で、溶剤形接着剤のような法令規制の対象には該当しなくなり、環境法にも適合、さらに、接着剤のスプレー噴霧時に付きまとう清掃の手間も削減できます。ホットメルトなら必要な場所に必要な量の接着剤の塗布が可能で、安全で健康被害の懸念のない作業環境、コスト削減と高い生産性を同時に実現可能です。

自動車内装部品製造

・木工

木工製品では様々な接着剤が用いられてきました。例えば木目調などに代表される、化粧シートを木質材と貼り合わせるプロファイルラッピングという工程では溶剤形接着剤を多く使用してきました。溶剤形接着剤を使用する従来の方法ではVOC規制はもちろん、従業員の作業環境維持のコストのほか、ナイフコーターという接着剤の塗布装置では塗布幅の調整ができず、日々の清掃も大変でした。ホットメルトシステムを使用することでVOC規制の対象から外れることはもちろん、有機溶剤による健康被害の懸念もなくなり、自由に塗布幅を変更することが可能なため清掃の手間も大幅に削減でき、さらには乾燥工程が不要となる事で生産性を向上させることができます。

まとめ

近年、グローバルにおいて先進的なVOC規制が行われるなか、我々は脱溶剤化の取り組みを推進していかなければなりません。自動車内装部品や木工製品に限らず、皆様のかかわる製品製造工程にもぜひホットメルトシステムのご検討をお願いします。

ノードソンは、国内外での豊富な実績でホットメルト接着剤への切り替えによる脱溶剤化を一括サポートしています。有機溶剤を使用しないことで、従業員への健康被害の改善はもちろんのこと、ノードソンの高精度塗布技術により接着剤の飛散を抑え、作業環境をキレイに保ち、清掃の手間を削減します。また、ホットメルト接着剤への移行で接着剤使用量を大幅に削減することが可能です。
環境や社会への貢献、従業員の作業環境の向上につながるホットメルト接着剤への代替を検討されている場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

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