塗着効率とは?

- 改善方法もご紹介

少子高齢化による労働力不足や働き方改革、グローバル競争の激化、DXの推進などを背景に、製造業における生産性向上の必要性が増しています。製造業で最も多い工程のひとつである塗装においては、塗着(とちゃく)効率の向上が求められています。そうしたなか、従来の液体塗装から粉体塗装による塗着効率の改善が有効です。
今回は、塗着効率とは何か、塗着効率を向上させるメリット、特に建材塗装で課題となる塗着効率とともに、塗着効率を向上させる方法をご紹介します。

目次

  1. 塗着効率とは
  2. 塗着効率を向上させるメリットとは
  3. 建材塗装で課題となる塗着効率の低さ
  4. 塗着効率を向上させる方法
  5. ノードソンの粉体塗装技術で塗着効率を改善
  6. まとめ

塗着効率とは

製造工程における塗装のうち、一つの指標となるのが「塗着効率」です。塗着効率とは塗装の際に使用された塗量と塗装物に付着した塗料の比率のことを指します。

塗着効率は、「〇〇%」とパーセンテージで表します。

塗着効率は高ければ高いほど良い状態です。なぜなら、塗着効率が高いほど塗料の無駄がなく、生産スピードが高いことを意味し、塗装にかかるコストの全面的な削減が可能になるためです。

塗着効率は、吐出するスプレーの方式や塗装現場によって異なるため、塗着効率を向上させるためには、各被塗物に応じたスプレー方式や環境を十分に検討する必要があります。

●塗着効率の計算式
塗着効率=塗装物に塗着した塗料の固形分/スプレーガンから噴出した塗料の固形分×100

塗着効率の計算式は、上記のように表されます。

塗料の固形分とは、塗膜重量のことです。塗料は希釈して使ったり、液体だけでなく粉体であったりすることもあるため、乾燥後の製品の重量を計って、重量はどのくらい増えたのかを算出し、その数値を計算に用います。

塗着効率を向上させるメリットとは

塗着効率を向上させることによるメリットは、次の点があげられます。

●コスト削減
塗着効率の向上により、塗料の無駄が減るため、塗料の費用が削減できます。また、塗料の無駄が減るということは、作業現場に飛び散る塗料の量も減るため、清掃時間が減少します。塗着効率が低いと周囲に飛散し、大規模な清掃作業が必要になることもありますが、塗着効率を向上させることで塗料飛散が減り、日々の清掃のみで環境を整えることが可能となります。結果的に、清掃の時間的、人員的コストの削減にもつながります。

●廃棄物削減
被塗物に付着しなかった塗料は産業廃棄物として処理されます。塗着効率を向上させることにより、塗料の飛散量が減るため、床に落ちた塗料の廃棄量を減らすことができます。つまり産業廃棄物処理コストも削減されます。

●VOC削減
一般的な塗装現場で使われている液体塗料などの有機溶剤にはVOC(Volatile Organic Compounds)という揮発性有機化合物を含んでいるため、塗装中や塗装後にVOCが大気中に揮発します。塗着効率を向上させることで塗料の飛散量が減れば、大気中のVOC排出量も低減し、作業環境の改善につながります。また従業員の健康メリットも期待できます。

建材塗装で課題となる塗着効率の低さ

塗装現場の中でも、日本の建材分野においては、液体塗料を使用した塗装が一般的です。しかし液体塗装は、廃棄量が多いことで廃棄コストが増えるという課題があります。なぜなら、一般的に液体塗装においては塗着効率が約35%程度と低いためです。さまざまな方法で塗着効率向上の対策は取られていますが、飛躍的に向上させることは難しいのが実情です。

また建材等の塗装に使われる液体塗料は有機溶剤を含むことが多く、先述の通り、塗膜から揮発したVOCを作業者が吸い込むことで、中毒症状の原因となります。

このようなことから、建材分野における塗装の塗着効率を向上させることは急務と言え、より効率的かつ効果的な対策を取る必要があります。

塗着効率を向上させる方法

塗着効率を向上させるためには、次の方法が考えられます。

●塗装方法の工夫
スプレー角度を塗装面に対して垂直にしたり、パターン幅を狭くしたり、霧化エア圧を低くしたり、スプレー距離を近付け、一定に保ったりするなどして塗り方を変えることで塗着効率を向上させることができます。それぞれ期待できる塗料削減率が異なり、例えば、スプレー角度を塗装面に対して垂直にする方法では、塗料削減率は30%以上期待できると言われています。

●粉体塗装への切り替え
改善効果が最も高いのは粉体塗装への切り替えです。粉体塗装とは、あらかじめ顔料や樹脂などを粉末状に砕いた「粉体」を塗料として塗装する方法です。
粉体塗装では、液体塗装と異なり、塗装の工程で飛散した粉体塗料を拾い集めて再利用することが可能であるため、最大95%まで塗着効率の改善を行うことができます。
また、粉体塗料には有機溶剤が含まれていないため揮発しないというのも再利用が可能な理由です。液体塗装と比較すると、粉体塗装は人体への影響は少なく、安全性の高い塗装方法でもあります。

>【関連コラム】粉体塗装(パウダーコーティング)とは – メリットと環境配慮に最適な理由

ノードソンの粉体塗装技術で塗着効率を改善

ノードソンは独自の粉体塗装システムをご提供しております。同システムを利用することで、高精度な粉体塗装の自動化による生産性向上が実現すると同時に、塗着効率の向上につながります。また、他にもさまざまなメリットを享受できます。

・高密送技術で高い塗着効率を実現
ノードソンの粉体塗装システムに採用されているHDLVテクノロジーシステムは高密送技術を有し、複雑な形状の対象物でも高い塗着効率を実現します。生産効率向上、廃棄コスト削減が期待できます。

・人体への影響軽減を実現
VOCを放出しない塗料を使用する粉体塗装は人体への影響が少なく、安全性の高い塗装と言えます。一方で、粉体塗装では塗装時に噴射した粉を吸い込んでしまうリスクに対し、防塵服やマスクで防御することが大切です。

・塗装品質の安定を実現
液体塗装は、熟練工の技術や経験によることが多い傾向がありましたが、粉体塗装では誰でも安定した塗装品質を確保できるようになります。

・環境に適した最適なシステム導入をご提案
ノードソンの経験豊富なエンジニアが、工場の環境に合わせて最適なシステムの導入方法を高いレベルでご提案し、オーダーメイドで実現します。スペースの活用や塗装のさらなる効率化が期待できます。

まとめ

塗着効率を向上させることは塗装工程のある製造現場において多くのメリットを生み出します。特に液体塗装を行っている現場においては、塗着効率向上のために粉体塗装に切り替え、さらにロボットによる自動化を行うことで、生産性向上、コスト削減にもつながります。

ノードソンの粉体塗装システムは、塗着効率向上のお手伝いが可能です。詳細はサービスご紹介ページをご覧ください。

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