ホットメルトとは

- 特徴やVOC規制強化への対応

ホットメルトとは、主に接着剤として使われる樹脂製品の一つです。加熱すると液体になり、冷却すると固まるという性質を持ち、近年は安全性の面から有機溶剤の代わりの接着剤として注目されています。

有機溶剤は、労働安全衛生法および労働安全衛生法施行令の規定に基づいた有機溶剤中毒予防規則のほか、消防法上の第4類に該当し、届け出や保管数量の管理が必要となるなど、従業員の安全や健康管理に深くかかわるほか、国際的なVOC(揮発性有機化合物)規制の対象物としてビジネスへの影響が懸念されます。海外の一部の国では輸入品についても厳しく規制されており、日本企業も規制の強化に適合していく必要があります。
ここでは工場・事業場からのVOC排出が懸念されるものとして溶剤形接着剤を取り上げ、VOC規制の実態と共に、ホットメルト接着剤の特徴や使用するメリットや応用例をご紹介します。

目次

  1. ホットメルトとは
  2. 環境規制と接着剤
  3. ホットメルト接着剤の特徴やメリットと応用例
  4. まとめ

ホットメルトとは

ホットメルトとは、熱で溶かして接着するタイプの接着剤の一つです。用途によって成分は異なりますが、主にEVA(エチレン酢酸ビニル)、オレフィン、ポリアミド、合成ゴム、アクリル、ポリウレタンなどが原料となります。ホットメルトは通常、固形の棒状や顆粒状で供給され、専用のホットメルトガンに装填して使用します。ホットメルトガンは内部でホットメルトを加熱し、液状にすることで接着面に塗布できます。

ホットメルトの特徴は、速乾性と強力な接着力です。また、溶剤を使用しないため、揮発性有機化合物(VOC)の発生がなく、環境に優しいというメリットがあります。さらに、一度固まった後でも再度加熱することで溶かすことが可能なため、修正や取り外しが容易です。

一方、耐熱性や耐水性には劣るため、使用する環境や条件によっては注意が必要です。また、ホットメルトガンを使用する際は、高温になるため火傷に注意する必要があります。

用途としては包装材の接着、家具の製造、自動車製造、書籍の製本、靴の製造など、幅広い分野で使用されています。ホットメルトはその特性から、瞬間接着が求められる工業分野で特に重宝されます。

環境規制と接着剤

VOCとは「Volatile Organic Compounds/揮発性有機化合物」の略で、大気中で気化する有機化合物の総称です。トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの多様な物質が含まれます。
近年、このVOCを含む溶剤などの使用の規制が強まっていることを背景に、脱溶剤化が進んでいます。

・日本でのVOC規制

日本では、VOCの排出規制が平成18年4月1日より開始され、自動車の炭化水素の排出量規制や、自動車部品の塗装などを行う塗装関係施設、接着関係施設、印刷を行う施設や化学製品製造関係施設などへの規制が行われ、それ以外にも、経済産業省をはじめとした行政による自主的取組の促進、各種検討調査、アドバイザー派遣、などの施策が講じられています。

・カナダでのVOC規制

2008年、当時の環境大臣によりマニキュアや接着剤など98種類の個人が使用する製品、塗料・ニスなどをはじめとした48種類の建築用コーティング材、自動車等の傷ついた表面の修復・仕上げに用いる14種類のコーティング材やクリーナーなどにVOC濃度上限値の設定がされました。

・中国でのVOC規制

中国では、2020年12月よりVOC規制が適用されています。北京や重慶など重点地域での大気汚染防止を目的として、主要産業にVOCの発生抑制を要求する政策を実施、低VOC製品規格品へ移行するよう強制しており、日本企業でも中国工場に塗料や接着剤などを使用する場合は対応が必要となります。

・接着剤に含まれるVOCと脱溶剤

VOC排出に懸念のある分野は様々ありますが、特に接着の分野でVOC排出が懸念されるものとして溶剤形接着剤があります。この接着剤に含まれる有機溶剤は、塗布後、揮発して固まる際にトルエンや酢酸エチルといったVOC として大気中に放出されるため、脱溶剤化が求められています。

自動車内装部品製造

ホットメルト接着剤の特徴やメリットと応用例

VOC排出が懸念される溶剤形接着剤を代替するものの1つに、ホットメルト接着剤があります。ホットメルト接着剤は常温で固体、加熱すると溶融し液体になる性質を持ち、VOCの含有量が極めて少なく大気汚染も防ぐことが可能です。また乾燥・養生工程が不要で接着速度が速いというホットメルト接着剤の特徴は、生産性向上にも寄与するメリットとなり、さまざまな業界の製品製造工程で採用されています。

・自動車

自動車向けの接着剤は耐熱要求が高く、従来のホットメルト接着剤では適用部位が限られていました。というのも、ホットメルト接着剤の特徴としては、先に述べたように、加熱すると溶融し液体になるという性質を持ちますので、耐熱要求が高い部位への使用が難しいという課題がありました。しかし、最近開発された自動車向け高耐熱ホットメルトは直射日光により高温になる部位であるインストルメントパネルやドアトリムの内装表皮接着にも対応可能となりました。ホットメルトを使用する事で、溶剤形接着剤のような法令規制の対象には該当しなくなり、環境法にも適合、さらに、接着剤のスプレー噴霧時に付きまとう清掃の手間も削減できます。ホットメルトなら必要な場所に必要な量の接着剤の塗布が可能で、安全で健康被害の懸念のない作業環境、コスト削減と高い生産性を同時に実現可能です。

自動車内装部品製造

・木工

木工製品では様々な接着剤が用いられてきました。例えば木目調などに代表される、化粧シートを木質材と貼り合わせるプロファイルラッピングという工程では溶剤形接着剤を多く使用してきました。溶剤形接着剤を使用する従来の方法ではVOC規制はもちろん、従業員の作業環境維持のコストのほか、ナイフコーターという接着剤の塗布装置では塗布幅の調整ができず、日々の清掃も大変でした。ホットメルトシステムを使用することでVOC規制の対象から外れることはもちろん、有機溶剤による健康被害の懸念もなくなり、自由に塗布幅を変更することが可能なため清掃の手間も大幅に削減でき、さらには乾燥工程が不要となる事で生産性を向上させることができます。

まとめ

近年、グローバルにおいて先進的なVOC規制が行われるなか、我々は脱溶剤化の取り組みを推進していかなければなりません。自動車内装部品や木工製品に限らず、皆様のかかわる製品製造工程にもぜひホットメルトシステムのご検討をお願いします。

ノードソンは、国内外での豊富な実績でホットメルト接着剤への切り替えによる脱溶剤化を一括サポートしています。有機溶剤を使用しないことで、従業員への健康被害の改善はもちろんのこと、ノードソンの高精度塗布技術により接着剤の飛散を抑え、作業環境をキレイに保ち、清掃の手間を削減します。また、ホットメルト接着剤への移行で接着剤使用量を大幅に削減することが可能です。
環境や社会への貢献、従業員の作業環境の向上につながるホットメルト接着剤への代替を検討されている場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

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