製造業におけるSDGsの取り組みと環境保全

- VOCの排出削減が必要な理由とは?

多くの企業が、経営や事業の観点からSDGsへの取り組みを進めています。特に、環境保全については、重要なテーマと位置づけられています。製造業においては、工場から排出される大気汚染物質が問題となっておりVOC(揮発性有機化合物)排出削減への対応は急務となっています。
今回は、製造業におけるSDGsと環境保全への取り組みの重要性、VOCの排出削減が必要な理由、VOCの発生源と抑制方法をご紹介します。

目次

  1. SDGsと環境保全の関わり
  2. 企業の環境保全の取り組み事例
  3. 製造業における環境保全は重要なテーマ
  4. VOCとは?VOCの削減がSDGsへの貢献に繋がる
  5. VOCの発生源とは
  6. ノードソンのソリューションでVOCの発生を抑制可能
  7. まとめ

SDGsと環境保全の関わり

SDGsと環境保全とは、密接な関わりがあります。

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことで、持続可能な社会を目指す世界共通の目標です。17のゴールとその課題ごとに設定された169のターゲット、つまり達成基準で構成されており、目指すべき社会的基盤の構築を、2030年までに達成することを目標としています。

SDGsは主に、先進国・途上国すべての国を対象に、「環境、社会、経済」についての課題解決が目標となっています。そしてその3つの側面のバランスがとれた社会を目指します。

環境保全は、SDGsの核を成すものの一つであり、人々が人間らしく暮らしていくために、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして「誰一人取り残さない」ことが重要です。

企業の環境保全の取り組み事例

現在、様々な企業や組織がSDGs宣言を行い、持続可能な開発目標の実現に向けて具体的な行動計画を策定しています。そのような環境保全のための取り組み事例をいくつかご紹介します。

・A社(自動車分野)
地球環境保全のため、長期的な取り組み目標を策定しており、これに基いた取り組みを推進しています。その中の、工場CO2ゼロに向けた取り組みでは、工場のシンプル・スリム化、エネルギーの利用率向上、エネルギーを使わずに加工や搬送を行う、からくり仕掛けの導入などの新技術を開発し、世界の各工場に導入するといった活動を行っています。

・B社(化学分野)
環境分野等の課題に対しての取り組みにKPIを設定し、全社的に取り組みを実施しています。例えば、気候変動対応、環境負荷低減、資源有効利用の分野で貢献するグループの製品・技術を認定し、その売上実績を増加させていく施策を行っています。

・C社(空調分野)
SDGs17目標の中から、事業を通じて大きく貢献できる8目標に注力した活動を行っています。特に環境保全の分野では、開発・生産工程における、エネルギー起源のCO2排出とHFC・PFCの排出を削減する施策を推進しています。

製造業における環境保全は重要なテーマ

SDGsで重要な環境汚染などの環境問題への対応、および環境保全は、あらゆる業界で取り組まれていますが、製造業においても重要視され、すでに多くの企業によって取り組みが進められています。

製造業において、特に環境保全のために取り組むべきこと、できることとして「VOC排出抑制」「土壌汚染防止」「廃棄物の削減」などがあります。

・VOC排出抑制:建機や建材等への塗装工程においては、有機溶剤使用に伴う揮発性有機化合物(VOC)の発生の問題があります。VOCは大気汚染物質であり人体等への悪影響が報告されています。

・土壌汚染防止:製造工程において、有機溶剤などの有害物質の排出を含む場合には、土壌汚染防止も検討しなければなりません。

・廃棄物の削減:製造工程などの生産工程全般とともに、流通工程も含めたあらゆる事業工程において、廃棄物の削減を目指すことが重要です。

なかでもVOC排出の規制は世界的に強化されており、日本国内でも規制が進んでいます。有機溶剤を含む塗料を利用している製造業は、特に対策が急務となっています。

VOCとは?VOCの削減がSDGsへの貢献に繋がる

ところで、VOCとはどのようなものなのか、もう少し詳しく解説します。

●VOCの悪影響
VOCは「Volatile Organic Compounds/揮発性有機化合物」の略で、揮発しやすく大気中で気体となる有機化合物の総称です。

身近な具体例としては、塗料や接着剤、印刷用のインクなどの溶剤に含まれているほか、ガソリンから揮発するトルエンやキシレンなどの物質も該当します。

VOCは、大きく大気環境、室内環境、作業環境の3つの環境における悪影響が問題視されています。

・大気環境への悪影響
VOCは、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質等の二次生成粒子の原因物質です。光化学オキシダントとは人体への健康被害が報告されている「光化学スモッグ」の原因となる大気中の酸化性物質の総称です。

・室内環境、作業環境への悪影響
室内ではシックハウス症候群や化学物質過敏症の問題があります。作業環境においては、特に有機溶剤の使用において、気管支や視神経への悪影響などの健康被害が報告されています。

●VOC削減がSDGs目標達成につながる
VOC排出の削減に取り組むことにより、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標12「つくる責任・つかう責任」に貢献します。

それぞれ、目標の概要を確認しておきましょう。

・目標3「すべての人に健康と福祉を」
地球上のすべての人が健康で、幸せな生活を送れるように、あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する目標です。

ターゲットの3.9には「2030 年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。」が存在します。

・目標12「つくる責任・つかう責任」
CO2の排出を減らし、持続可能な生産と消費を実現する社会の仕組みを作ることを目指すものです。そのためには、生産者と消費者がそれぞれ意識を高める必要があります。

ターゲットの12.4には「2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する」が存在します。

VOCの発生源とは

VOC削減に取り組む際には、VOCがどこから発生しているのかを知る必要があります。ここでは、国内データより、主な発生源をご紹介します。

●塗料、洗浄剤、インキ、接着剤等が多い
2000年のVOC排出量の発生源別構成のデータによれば、最もVOC排出量が多いのが「塗料」であり、全体の56%を占めていました。次いで、10%未満ではありますが「工業用洗浄剤」「化学製品」「印刷インキ」「接着剤」の割合が多くなっています。

●塗料等を多く扱う業種が多い
同年のVOC排出量の業種別構成データによれば、「建設業」22%、「輸送用機械器具」16%、「金属製品」13%の順で排出が多い状況となっています。塗料等を多く取り扱う業種が該当していることがわかります。

出典「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制について」VOC排出抑制検討会(平成15年12月)
https://www.meti.go.jp/policy/voc/downloads/VOCgenjou_kadai.pdf

東京都環境局のデータでは、都内では2015年度において、1年間の排出量は約6万トンとなっておりその排出の内訳は、塗装や印刷などの工場やガソリンスタンド、工事現場などの「固定発生源」からは約7割となっており最多です。次いで、一般家庭やオフィスから約2割、排出されており、残り約1割は自動車や航空機、船舶などの「移動発生源」からの排出となっています。

出典:東京都環境局「都内の発生源別VOC排出割合(2015年)」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/voc/what_voc.html

ノードソンのソリューションでVOCの発生を抑制可能

ノードソンでは、さまざまなソリューションを通じて、製造業のVOCの発生抑制への取り組みをサポートすることが可能です。

ソリューションの一つである粉体塗装システムでは、VOCを含む有機溶剤を使用する液体塗装と異なり、有機溶剤が含まれていない粉体塗料による塗装を行うことができるため、VOCの発生を抑制できます。加えて、ノードソンの粉体塗装システムであれば、作業時間の短縮や塗装品質の安定化といった生産効率を高めるメリットも享受できます。

>粉体塗装ソリューションの詳細はこちら

>粉体塗装のお役立ちコラムはこちら

また、ノードソンではホットメルト接着剤という有機溶剤を一切含まない接着剤の活用をご提案しております。たとえば、自動車内装部品の製造や木工製品の製造用途においてホットメルト接着剤を活用することで、VOCの発生を抑制することができます。

この他にも、VOC発生を抑制するためにさまざまなご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

製造業における環境保全の取り組みは、SDGsを推進するうえで欠かせないものとなっています。なかでもVOCの排出抑制は、喫緊の課題となっており、塗料を取り扱う製造シーンにおいては、粉体塗装への切り替えも含めた対応をご提案いたします。

ノードソンのサービス詳細については、ぜひサービス紹介ページをご覧ください。

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