粉体塗装が環境に優しい理由とは
- 導入メリットや活用シーン、最新のシステムなどを紹介
目次
粉体塗装とは?液体塗装との違い
粉体塗装は、顔料や樹脂を粉末状にした塗料を用いる塗装方法で、焼付塗装の一種です。静電気や熱を利用して塗料を付着させ、焼付乾燥させることで塗膜を形成します。静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法の2種類があります。
液体塗装は有機溶剤を使用しますが、粉体塗装は溶剤を使用しないため、VOC(揮発性有機化合物)の排出がなく、環境に優しいです。また、粉体塗装は一度の塗装で厚い塗膜を形成でき、プロセスの短縮にも寄与します。
粉体塗装は環境にも優しい
1.塗装で課題となるVOCとは
VOCは、常温で容易に蒸発し、大気中に放出される有機化合物の総称です。塗料、接着剤、洗浄剤、溶剤などに含まれることが多く、空気中に放出されると環境や人体に影響を及ぼすことがあります。
2.VOCの抑制は製造業や建機建材への塗装業などでは大きな課題に
製造業や塗装業においても、このVOCを抑制することは重要な課題になっています。
特に建機や建材等への塗装工程においては、有機溶剤使用に伴う揮発性有機化合物(VOC)の発生の問題があります。VOCの規制が世界的に進んでいる中、環境保護と公衆衛生の向上も含めて対策が必要である状況です。
3.粉体塗装ならVOCを押さえて人体への影響も抑えられる理由
そのような中、粉体塗装は環境や人体に優しい塗装方法として需要が高まっています。
粉体塗装では、塗料中に溶剤を含まないため、塗装過程で揮発する有機化合物がほとんどありません。これにより、液体塗装から粉体塗装に切り替えることで大気中へのVOCの排出が大幅に減少します。
塗着効率が良いことも環境に優しい理由
静電気を利用して塗料を付着させる粉体塗装は、塗料の飛散を最小限におさえることができ、材料のロスを削減します。さらに、塗装過程で使用されなかった粉体塗料は回収して再利用することが可能です。これにより、廃棄物の量が減り、環境負荷が低減されます。
粉体塗装なら膜厚の均一化も可能
1.膜厚とは
膜厚とは、塗装やコーティングにおいて、塗膜の厚さを指します。塗装の品質や性能を評価するために非常に重要な要素です。膜厚は通常、ミクロン(μm)単位で測定されます。膜厚は塗装の耐久性や美観に大きく影響しますが、粉体塗装は膜厚の均一化も容易で、適切な膜厚を保つことで、塗膜のひび割れや剥離を防ぐことができます。
2.膜厚均一化のメリット
膜厚を均一化することで以下のようなメリットを得られます。
・ 耐用年数の向上: 均一な膜厚は劣化を防ぎます。
・汚れにくさの向上: 凸凹が少ないため清掃が容易です。
・美観性の向上: 見た目が美しく、光沢も均一になります。
様々な場面で活用される粉体塗装
1.鋼製家具
構成家具は美しい見た目から人気のある家具ですが、耐久性もあわせて必要とされるため、どちらも両立できる粉体塗装のような方法が重宝されます。
>鋼製家具塗装の自動化技術-大量生産品の生産コスト削減に貢献
2.配電盤
形状が大きく・複雑なものでも、粉体塗装であれムラなく精密な塗布が可能です。
3.重機
重機は屋外の過酷な環境で使用されることが多くありますが、粉体塗装はそのような環境に耐えることができる塗装方法となります。
4.ガードレール
粉体塗装システムはスムーズな色替えに対応可能なため、ガードレールの多色需要にも対応することができます。
粉体塗装が解決する様々な課題
1.粉体塗装で家具・什器の塗装の課題を解決
家具や什器においては、見た目の良さと耐久性を高めるために均一な塗装が求められます。また、一定の品質を保つために、液垂れや色ムラを防ぐ必要があります。
これらの課題に対して、粉体塗装を使用することで塗装ムラが少なく、滑らかな仕上がりとすることができます。
2.粉体塗装で重機の塗装の課題を解決
重機を長持ちさせるには、サビなどから本体を守る必要があるため、丁寧な塗装が求められます。
そのような重機の塗装には、粉体塗装が適していると考えられます。粉体塗装を静電塗装で行う場合には、静電気が及ぶ範囲であれば、広範囲に塗料が付着するのが特徴です。液体塗料では塗りづらい細かな部分も、スプレーガンで手軽に塗装が可能になります。特に大きな重機には広範囲に渡って効率的な塗装が可能になるため、最適といえます。
3.粉体塗装で農機具製造の課題を解決
農機具において、多くのメーカーが参入したことに伴って、各ブランドごとに多色化ニーズが高まっています。こうしたニーズに対応するため、製造現場では塗料の色替えが頻繁に発生することになりますが、色替えには手間と時間がかかってしまうのが通常です。こういった課題に対しては、ノードソンが提供する自動粉体塗装システム等を使用することで対応することができます。このように素早い色替えを可能にするような最新の機器を取り入れることで、生産性の向上を実現することができます。
粉体塗装に必要な機材
粉体塗装には以下のような機材には以下のようなものがあります。
・パウダーブース
・パウダースプレーガン
・フィードセンター
・ポンプ
・コントローラー
粉体塗装で進むロボット化
1.製造業の課題
近年、製造業界における人材不足に起因した、省人化の必要性が高まっています。これまで人が属人的に行っていた塗装作業についても、この課題に直面しつつあるのが現状です。こういった課題を解決するために、ロボットの活用が進んでいます。
2.塗装ロボットとは
塗装ロボットとは、産業用ロボットの一種で、ロボットアームにスプレーガンなどの、塗装を行える器具が装着されているものを指します。人がスプレーガンや刷毛(はけ)、ローラー等を用いて塗装を行っていますが、その人手による作業を代替したものが塗装ロボットです。
3.進む粉体塗装の自動化
塗装ロボットといえば、日本国内では主に自動車や工業製品の塗装に導入されていました。しかし海外では他の分野にも導入が進んでおり、近年、日本でも建材分野における導入も見られるようになりました。
例えば、外壁や室内の壁面塗装や建材の一部の塗装など多様な用途で塗装ロボットが活躍し始めています。塗装ロボットの導入により、製造現場全体の生産効率を高め、作業者の負担を抑えることが可能です。また塗装効率の改善も可能であることから、コスト削減につながります。
ノードソンの粉体塗装システム
ノードソンの粉体塗装システムを用いることにより、高精度な粉体塗装を実現できます。また、色替えにかかる時間や手間を削減するほか、生産効率を改善し、環境問題への配慮も実現するなど、複数のメリットが得られます。
●HDLVテクノロジーシステムなら塗着効率が高く、メンテナンスが容易
ノードソンの粉体塗装システムには、HDLVテクノロジーシステムという高密送技術を採用しています。これにより、より多くの粉体をより少ない圧縮エアで吐出することができるため、高い塗着効率を実現します。複雑な箇所にも簡単に入り込むことができるので、精密な塗装も可能です。さらに色替え速度の高速化による生産性向上にも寄与するほか、構造上、メンテナンスが容易であるというメリットもあります。
●粉体塗装への切り替えでVOC対策も実現
粉体塗装は、従来の有機溶剤を含む液体塗料を塗布する塗装と比較し、VOC(揮発性有機化合物)対策が可能です。日本の建材分野においては、有機溶剤や液体を使用した塗装が一般的となっているため、人体や環境への影響が懸念されています。
粉体塗装では、顔料や樹脂、添加剤などをあらかじめ粉末状に砕いた「粉体」を塗料として塗装するため、有機溶剤を使用しません。つまり液体塗装から粉体塗装に切り替えることでVOC対策といった環境問題への対応が可能となります。